研究テーマ
- 標的指向化を目的とした高機能・高品質(HFQ)脂質の設計・開発
- 核酸封入脂質ナノ粒子・細胞外小胞を対象とした新規薬物送達システムの開発
- 感染症・がんに対する新規mRNAワクチン製剤の開発
- がん治療を目的とした新規デザイナー細胞の開発
- 難治性がん治療用デザイナー細菌医薬の開発に関する研究
- PETを用いたニューモダリティの薬物動態研究
- コンパニオン/プレシジョンPET画像診断薬の開発
研究内容
生命科学研究の進歩に伴い、医薬品開発には大きな技術革新が起こっています。従来の低分子医薬品開発が成熟する一方で、抗体医薬の開発が大きく進展し、さらに現在では、核酸医薬、遺伝子医薬、細胞医薬、細菌医薬、小型細胞外小胞医薬など、多様で複雑なモダリティが医薬品として開発されています。
このような複雑な次世代モダリティを「薬物」から「医薬品」へと発展させるためには、医薬品の3要素である有効性・安全性・品質に関わる課題を解析し、それらの問題点を論理的かつ総合的に克服・制御するための技術と医薬品情報を創出することが必要です。一方、すでに上市された医薬品については、適正使用に資する医薬品情報の創出が求められます。これらの医薬品情報は、基礎研究成果である英文原著論文などを通じて一次情報として世界に発信され、新規医薬品の開発や医薬品の適正使用の推進につながっていきます。
医薬品情報学分野では、高機能・高品質(HFQ:High Functionality and Quality)脂質という独自の概念を体系化し、標的指向化を目的としたHFQ脂質の設計・開発を進めています。品質保証や製造方法を考慮した標的指向型DDS(Drug Delivery System)キャリアを基盤として、高い治療効果を発揮し、副作用を大幅に低減できる革新的な医薬品の開発に取り組んでいます。具体的には、核酸封入脂質ナノ粒子や細胞外小胞を対象とした新規薬物送達システムの開発、感染症・がんに対する新規mRNAワクチン製剤の開発、がん治療を目的とした新規デザイナー細胞の開発、難治性がん治療用デザイナー細菌医薬の開発などを推進しています。
これらの研究は、臨床現場で現在十分な治療法が確立されていない、悪性腫瘍や感染症などの難治性疾患を対象として進めています。長崎大学が培ってきた医歯薬連携の研究基盤と、臨床現場との近い距離を生かし、研究室独自の標的指向型DDS技術を基盤として、新規治療薬やワクチンの創出に向けた基礎研究を、医師・薬剤師や多様な分野の研究者と協働して推進しています。
当研究室では、長崎大学病院の診療科、熱帯医学研究所をはじめとする医学系研究室、企業などと連携し、基礎研究から臨床応用、品質設計を見据えた研究まで幅広く展開しています。生体分子認識や生体環境を利用したDDS技術を軸に、独創性の高い研究成果を創出し、次世代医薬品の開発と適正使用に貢献することを目指しています。
主な活動学会は、日本薬学会、日本DDS学会、日本薬物動態学会、日本核酸医薬学会、日本薬剤学会、遺伝子・デリバリー研究会、創剤フォーラムです。共同研究の中で日本脳循環代謝学会、日本超音波治療研究会、日本眼薬理学会に参加する機会も頂いています。
研究設備としては、LNPなどのナノ粒子製剤を調製するナノアッセンブラー Ignite、粒子径・PDI・ゼータ電位を測定するゼータサイザー Nano ZS、細胞外小胞やナノ粒子の粒子数・粒子径を解析する NanoSight Pro、1粒子ごとの表面修飾状態を数値化できるフローナノアナライザー(NanoFCM)、細胞外小胞などの分離・精製に用いる超遠心機、mRNAワクチンを含むLNP製剤の凍結乾燥製剤化に用いる真空凍結乾燥機(AdVantage Pro™)、機能性ペプチドを合成するペプチド固相合成機、脂質・ペプチド・薬物などの分析に用いるHPLC、体内動態評価に用いるPETなどを備えています。
これらの設備を活用し、HFQ脂質の合成、DDS製剤の調製、物性評価、ナノ粒子・細胞外小胞の解析、品質評価、体内動態解析までを一貫して実施することで、GMP製造・医薬品開発を見据えた実践的な研究に取り組むことができます。
