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ご挨拶

医薬品は、人々の生命と健康を支える重要な社会基盤の一つです。私は、薬学の使命を、医薬品を「守る(適正に使う)」「創る」「届ける」「育てる」「備える」という5つの「薬(やく)の倫理」として捉えています。医薬品の研究開発から品質保証、適正使用、そして未来の健康危機への備えまで、薬学には幅広い役割があります。

当研究室(医薬品情報学分野)は、新たな医薬品情報の創出を通じて「薬(やく)の倫理」を実践することを研究理念としています。特に、川上茂教授が専門とする薬物動態学を学術的基盤として、ドラッグデリバリーシステム(DDS)を中心とした医薬品情報学研究を推進しています。核酸医薬、遺伝子医薬、細胞医薬、細菌医薬、細胞外小胞医薬などの次世代モダリティ医薬品やワクチンの研究開発に取り組んでいます。研究成果を学術論文や特許として発信するとともに、GMP製造を見据えた製剤・品質評価にも取り組み、医薬品の創製から社会実装、適正使用までを視野に入れた研究を進めています。

私が研究や教育において大切にしているのは、臨床や社会の課題に目を向けながら、薬学の基礎研究(サイエンス)によって深く掘り下げることです。医薬品に関わる課題は、一つの専門分野だけで解決できるものではありません。薬学の専門性と研究力を基盤に、医学をはじめとする異なる分野の研究者と対話(Dialogue)と協働を重ねることで、新しい科学的知見や独創的な研究成果が生まれると考えています。

特に、長崎大学病院などの臨床現場で生まれた医薬品に関する疑問や未解決の課題を基礎研究へとつなげ、DDS技術の開発や新たな医薬品情報の創出を目指しています。さらに、その成果を医薬品の開発や薬物療法の改善へと還元する、基礎研究と臨床を双方向につなぐ研究を推進しています。

現在の医薬品では救えない患者さんのために、新しい医薬品を創り、必要とする患者さんへ届ける。また、希少疾患や難治性疾患の研究に挑戦し、将来のパンデミックに備えてワクチンや治療薬を開発する。こうした研究には、短期的な成果だけでは測れない大きな意義があります。たとえ一人の患者さんであっても、今ある医薬品では救えない患者さんを救いたい。 その思いを大切に、研究を進めています。

そして、研究を通じて学生が高度な専門性と自立した研究力、そして人間力を身につけ、異なる専門分野の人々と対等に対話し、協働できる薬剤師・研究者へと成長することも、私たちの重要な目標です。

薬物動態学を基盤としたDDS研究に関心のある学生の皆さん、臨床現場の課題を研究につなげたい薬剤師の皆さま、難病・希少疾患の治療薬の創製や新たなワクチンの開発に関心をお持ちの皆さま、そして共同研究をお考えの研究者・企業の皆さまとの出会いを楽しみにしています。

川上 茂