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ご挨拶

医薬品は、人々の生命と健康を支える重要な社会基盤の一つです。その創出と適正使用には、基礎研究から臨床、製剤開発、品質評価、情報解析、薬事、そして医療現場での実践まで、幅広い知識と技術が関わっています。近年、医薬品を取り巻く科学技術は急速に進歩しており、薬学には、これまで以上に多様な視点から医療に貢献することが求められています。

当研究室(医薬品情報学分野)は、薬を「つくる」ことと「正しく使う」ことの両方を支える学問領域として、有効性・安全性・品質に関わる新たなエビデンスの創出を重視しています。特に、核酸医薬、遺伝子医薬、細胞医薬、細菌医薬、細胞外小胞医薬など、複雑で多様な次世代モダリティ医薬品を対象に、基礎研究の成果を論文や特許として社会に発信しつつ、GMP製造を見据えた品質評価にも取り組んでいます。これらの研究を通じて、将来の医薬品開発や医療現場での適正使用に貢献することを目指しています。

私は薬剤師・研究者として、医療現場における医薬品の適正使用の重要性を常に意識してきました。医薬品に関わる研究は、決して一つの専門分野だけで完結するものではありません。だからこそ当研究室では、「臨床や社会の課題に目を向けながら、基礎研究として深く掘り下げる姿勢」を何よりも大切にしています。自由な発想と高い研究倫理のもと、互いの専門性や価値観を尊重し、学び合う。そこからこそ、新しい着想や独創的な成果が生まれると信じています。現在の医療では解決が困難な課題に対し、私たちは薬学の基礎研究力と医薬品を通じて医療の未来を切り拓く志を軸としながら、医・薬・工の垣根を越えた研究者、医師、薬剤師、そして企業の皆さまと強固に連携し、新たな可能性を共に切り拓いてまいります。

研究室は、新しい知識や技術を生み出す場であると同時に、次世代を担う人材を育てる場でもあります。学生の皆さんには、研究活動を通じて、課題を見つける力、情報を正しく読み解く力、仮説を立てて検証する力、そして成果を社会へ発信する力を身につけてほしいと願っています。そのため当研究室では、現象の背景にあるメカニズムを深く考察し、主体的に問いを立てて研究を進める力に加え、学会発表や論文発表を通じて成果を社会へ伝える力の育成にも力を入れています。

研究成果を学会で発表し、論文化する力は、将来、専門薬剤師として活躍する際にも、研究者として研究費を獲得しながら主体的に研究を進めていく際にも欠かせない能力です。研究は思い通りに進まないことも多くありますが、考え抜き、仲間や専門家と議論を重ね、少しずつ前に進む経験は、どのような進路に進んでも大きな力になります。また、多様な分野との共同研究を通じて専門性を高め、自分自身の強みを育てることは、将来の選択肢を広げるだけでなく、信頼できる人々との新たなネットワークを築き、自分らしく生きていく力にもつながります。

新しい医薬品の開発は、今なお有効な治療法が限られている患者さんに新たな希望を届ける営みです。薬学を学ぶ皆さんには、自らの知識と研究が未来の治療を切り拓く力になり得ることを実感しながら、目の前の研究や議論に真摯に向き合ってほしいと考えています。研究成果がすぐに医療へ届くとは限りませんが、一つひとつの発見の積み重ねが、次の医療を支える確かな一歩になります。

薬学研究に関心のある学生の皆さん、共同研究をお考えの皆さま、解明が待たれる難治性疾患の克服に向けた新たな医薬品情報の創出と、革新的な医薬品の開発に関心をお持ちの皆さまとの出会いを楽しみにしています。

川上 茂