Research
p53誘導性ホスファターゼPPM1Dによる 免疫・細胞分化制御機構の解明
〜新しいがん・炎症性疾患・代謝疾患治療法の開発を目指して〜
私たちの研究室では、細胞の分化や免疫応答、がん細胞の機能を制御する分子メカニズムを明らかにし、がん、炎症性疾患、代謝疾患、骨代謝疾患などの新しい治療法開発につなげることを目指しています。特に、p53誘導性ホスファターゼPPM1Dに着目し、好中球を中心とした免疫細胞の分化・機能制御、がん微小環境における免疫応答、さらに脂肪細胞や破骨細胞などの細胞分化制御について研究を進めています。
PPM1Dによる好中球分化・自然免疫制御
好中球は白血球の中で最も多い免疫細胞であり、感染防御や炎症応答の最前線で働きます。一方で、近年、好中球には機能や出現時期の異なる多様な集団が存在することが明らかになってきています。特に、がん組織に集積する腫瘍関連好中球は、腫瘍の進展や免疫抑制に関わる可能性があることから注目されています。

当研究室では、p53誘導性ホスファターゼPPM1Dに着目し、好中球の分化や機能、さらに腫瘍微小環境における免疫応答がどのように制御されているのかを明らかにすることを目指しています。PPM1Dによる自然免疫制御機構を解明することで、がんや慢性炎症に対する新しい治療戦略の開発につながることが期待されます。
PPM1Dの多様な分子機能の解明
PPM1DはSer/Thrホスファターゼであり、DNA損傷応答、細胞増殖、免疫応答などの制御に関わる分子です。白血病や骨髄異形成症候群などでは、PPM1Dの過剰発現や遺伝子変異が報告されており、がんや免疫疾患におけるPPM1Dの役割が注目されています。
これまでの研究から、PPM1DにはC末端領域の異なるスプライシングバリアントPPM1D430が存在し、白血球や精巣に特徴的に発現することが明らかになっています。当研究室では、PPM1DおよびPPM1D430の細胞内局在や機能の違いに着目し、免疫細胞やがん細胞における役割を明らかにすることを目指しています。
また、悪性脳腫瘍であるグリオブラストーマにおけるPPM1Dの機能にも注目しています。PPM1Dががん細胞の増殖、生存、治療抵抗性にどのように関与するのかを明らかにし、新たな治療標的の発見につなげることを目指しています。
PPM1Dによる細胞分化・組織恒常性制御
PPM1Dは免疫応答だけでなく、さまざまな細胞の分化や組織の恒常性維持にも関与することが示唆されています。当研究室では、好中球を中心とした免疫細胞の分化制御に加え、脂肪細胞や破骨細胞などにおけるPPM1Dの機能解明にも取り組んでいます。
脂肪細胞には、エネルギーを貯蔵する白色脂肪細胞、熱産生に関わる褐色脂肪細胞、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の性質をあわせ持つベージュ脂肪細胞が存在します。白色脂肪細胞の過剰な分化や肥大化は肥満や代謝異常につながるため、その制御メカニズムの解明は重要な課題です。

当研究室では、PPM1Dが白色脂肪細胞への分化を制御していることを見出しており、脂肪滴形成や脂肪細胞機能におけるPPM1Dの役割について研究を進めています。また、白色脂肪細胞からベージュ脂肪細胞への変化におけるPPM1Dの機能についても研究を進めています。
さらに、破骨細胞は骨吸収を担う細胞であり、骨代謝や炎症性疾患と深く関わっています。当研究室では、破骨細胞の分化や機能制御におけるPPM1Dの役割についても研究を進めています。これらの研究を通じて、PPM1Dが免疫、代謝、骨代謝をつなぐ分子基盤としてどのように働くのかを明らかにすることを目指しています。
〜研究を通じて目指すもの〜
これらの研究を通じて、PPM1Dを介した細胞分化、免疫応答、がん細胞制御、代謝制御の仕組みを明らかにし、がん、炎症性疾患、肥満・代謝疾患、骨代謝疾患に対する新しい治療法開発へとつなげることを目指しています。
PPM1Dを軸として、免疫細胞、がん細胞、脂肪細胞、破骨細胞など多様な細胞の機能を研究することで、疾患の背景にある細胞応答の共通原理を理解し、新たな治療標的の発見につなげていきます。