ご無沙汰致しております

中島憲一郎(昭46)

 今年も近況便りを書かねばならない時期になりました。例年ですと,同級生の皆さんにお願いして書いてもらうのですが,今回はこれまで理事の役目をほとんど果たしていなかったお詫びに,私自身が書いて見ようと思います。昭和46年に学部を卒業した皆さんと,昭和48年に大学院修士課程を修了した皆さんが私の同級生になります。歳月がたつのは本当に早いもので,あと数年で卒後30年を迎えます。当時講義をしていただいた諸先生は大学には一人も居られません。入学当初若々しい助手であった松田芳郎先生は昨年新設の環境科学部に移られ,教授として活躍されていますし,木下敏夫先生はこの春退職され,長崎県薬剤師会でコンピュータ関係の仕事を担当しておられます。
 大学に居りますと,毎年,新入生が入ってきますし,在学している学生さんの年齢はいつも同じなために,ついつい自分が若いと錯覚してしまいます。事実,若いような気もします。しかし,現実は厳しいものです。頭髪は白くなるし,薄くもなります。学生さんが何を考え,何を望んでいるかなど,以前は友達か先輩の気持ちで考え,ある程度理解できたのですが,もう駄目です。よくよく考えて見ると,私たちの子供の年齢の学生さんが在学しているのです。学生というより,自分の子供を見ているような少し奇妙な気持ちがします。教官というより親の立場を強く感じているのかもしれません。
 さて,薬学部の内容は私達の時代とは随分異なったものとなっています。大学院博士後期課程が設置されて既に12年が経過し,これまで47名が入学しています。薬学研究の成果は着実に増加し,その内容も多岐に亘り,先端的なものとなっています。毎年,各研究室の業績を集めた論文集が出版されますし,各教官の業績も自己評価書という形で明らかにされます。時代の要請とは言え,大袈裟に言えば,大学の生き残りを賭けて,薬学部が戦っていることになります。時代の要請と言えば,高度な教育を受けた薬剤師,いわゆる臨床薬剤師の養成という課題への取り組みがあります。皆さん既にご承知のように,医療法の改正により,薬剤師が医師や看護婦とともに医療スタッフの一員として明文化され,大きな責務を課せられるようになりました。全国の薬系大学・学部ではこれに対処するために,カリキュラムの中で,薬剤師教育に関する教科目や実習を取り入れ,教育の充実を図るようになってきました。わが薬学部でも附属病院薬剤部と長崎市薬剤師会の絶大な協力を得て,3年次生に1か月の実務実習を導入することができました。学生さんが医療の現場を体験することの大切さをつくづく感じています。ところで,来春から,大学院に臨床薬学専攻の設置が予定されています。6か月の長期実務実習を含む臨床薬学系の教育・研究を目指すもので,薬物治療学と医療情報解析学の2講座と4つの協力講座からなる大学院です。定員は16名で社会人入学も予定されています。21世紀に向けて,臨床薬剤師を目指す人の教育・研究の場として大きな期待が寄せられています。
 これからの薬学がどのような方向に進んでいくのか,予想するのは困難ですが,世の中から医療が無くならない限り,お薬は不可欠であり,薬剤師が果たす役割も非常に大きく,またその責任も重大であることは間違いないでしょう。薬学部に残っている者として,資質の高い,優れた薬剤師や研究者が育っていくように精一杯尽力したいと思っています。
 なかなか同級生の皆さんと会う機会がありませんが,いろいろな通信手段が発達した今日です。時間つぶしに適当な手段で近況など連絡ください。

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