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炎症制御におけるミトコンドリアの機能

 炎症は、炎症の引き金となる刺激に直接応答したマクロファージや樹状細胞などが、インターロイキン-1β(IL-1β)などのサイトカインを放出することで惹起されます。本来このIL-1βの産生は一過性であるべきですが、何らかの障害によって持続的に産生されてしまうと炎症が必要以上に遷延化し、慢性炎症に至ります。その際、特に不顕性の慢性炎症が問題で、軽微であっても長期に及ぶ炎症は、生体の恒常性を崩すのに十分なダメージを生体に与え、疾患の発症をもたらします。よって、IL-1βの産生をいかに正確に制御するかが、炎症の程度や持続時間を制御する上での重要な戦略の一つとなります。

 IL-1βや、それと類似した構造を持つIL-18の産生には、インフラマソームと呼ばれる細胞内タンパク質複合体が重要な役割を担っています。複合体の構成分子の違いによっていくつかのインフラマソームがありますが、その中でNLRP3インフラマソームは、病原性微生物に限らず、シリカ、アスベスト、低浸透圧などの外来性因子からATPや尿酸結晶などの内在性因子に至るきわめて多様な刺激によって活性化されます。インフラマソーム内で活性化されたプロテアーゼCaspase-1は、IL-1βやIL-18の前駆体を成熟型分子にプロセンシングし、その後、成熟型分子は細胞外に放出されます。


 NLRP3インフラマソームの活性化機構の研究では、日本を含めた世界中の多くの研究者がしのぎを削っています。これまでの研究の主流は、さまざまなNLRP3インフラマソーム活性化刺激に「共通した活性化機構」の解明を目指した研究です。その中でここ数年でとくに注目されているのがミトコンドリアの関与で、機能不全に陥ったミトコンドリアから産生される活性酸素種や、細胞質に放出されたミトコンドリアDNA、とくに酸化されたミトコンドリアDNAがNLRP3インフラマソームの活性化を促すというモデルが提唱されています。

 しかし、私たちがミトコンドリアの応答やミトコンドリア機能の必要性という視点で細かく調べていくと、インフラマソーム活性化刺激の種類に応じてミトコンドリアの関わり方が互いに異なっていることが分かってきました。そして、数あるNLRP3インフラマソーム活性化刺激のうち、細胞外ATPのみが、NLRP3インフラマソームを活性化する際にミトコンドリアの正常な機能を必要とすることが明らかとなりました(発表論文1)。この結果は、機能を維持したミトコンドリアが積極的にインフラマソームの活性を調節する機構が存在することを示しています。


 細胞外ATPは、他のNLRP3インフラマソーム活性化刺激とは異なり、標的細胞の膜表面に発現する特異的な受容体を介してシグナルを伝達するため、NLRP3インフラマソームの活性を厳密に制御することが可能です。その厳密な制御にミトコンドリアが関わっていることは、炎症の制御機構を考える上で非常に興味深く、現在、どのようなミトコンドリアの機能が実際に細胞外ATPによるNLRP3インフラマソーム活性化の促進に働いているかについて検討を進めています。


発表論文

1. Sadatomi D, Nakashioya K, Mamiya S, Honda S, Kameyama Y, Yamamura Y, Tanimura S, Takeda K
Mitochondrial function is required for extracellular ATP-induced NLRP3 inflammasome activation.
J Biochem 161, 503-512 (2017)

2. 武田 弘資
ミトコンドリアによる慢性炎症制御.
別冊BIO Clinica 慢性炎症と疾患 4 (2), 32-37 (2015)

著書

1. Takeda K, Sadatomi D, Tanimura S.
Roles of mitochondrial sensing and stress response in the regulation of inflammasome.
Chronic Inflammation: Mechanisms and Regulation, eds Takatsu, K. and Miyasaka, M. (Springer Japan) pp 299-308 (2016)




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