プリオン病などの脳神経疾患の早期診断を目的とした分子プローブの開発


クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)に代表されるプリオン病は、致死性の神経変性疾患であり、有効な診断法や治療法は現在も確立されていません。その発症は正常型プリオン蛋白質(PrPC)が、構造変換して生じるアミロイド構造を有するPrPScが引き金になると考えられています。PrPC)が、構造変換して生じるアミロイド構造を有するPrPScが引き金になると考えられています。PrPCがPrPScに変換して病気を引き起こす要因としがPrPScに変換して病気を引き起こす要因として、プリオンタンパク質の遺伝子変異、硬膜移植やBSE摂取による外因性PrPScの感染が知られています。一方で、原因不明の孤発性CJDが全プリオン病の80%を占めており、未だに病態の全貌は多くが明らかになっていないのが現状です。そこで我々は、プリオン病の病態理解や早期診断に繋がると期待される核医学的手法にてPrPScを可視化できる分子プローブの開発を目指しました。これまでに、長崎大学医学部感染分子解析学分野の西田教行教授との共同研究にて、当研究室で見出されてきた様々なAβ結合分子を母体化合物として、フラボノイド類縁体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体などの様々な分子プローブの合成と基礎的評価を重ねてきました。その結果、フラボノイド類縁体であるスチリルクロモン誘導体の[123I]SC-OMeがSPECT/CT評価において、マウス馴化BSE感染マウス脳内のPrPSc存在部位にのみを可視化できることを見出しました。また、PrP凝集体やマウス脳内のPrPScに極めて強い結合親和性を有する[125I]5-IBF-NHMeの開発にも成功しました。現在更なる改良を行い、脳移行性の向上や光異性化の制御などが達成された新たな誘導体の開発にも成功し、今後の展開が期待されます。









<代表論文>

Fuchigami T, Yamashita Y, Kawasaki M, Ogawa A, Haratake M, Atarashi R, Sano K, Nakagaki T, Ubagai K, Ono M, Yoshida S, Nishida N, Nakayama M,
Characterisation of radioiodinated flavonoid derivatives for SPECT imaging of cerebral prion deposits.
Sci Rep, 5, 18440 (2015).

Kawasaki M, Fuchigami T, Kobashi N, Nakagaki T, Sano K, Atarashi R, Yoshida S, Haratake M, Nishida N, Nakayama M,
Development of radioiodinated acridine derivatives for in vivo imaging of prion deposits in the brain.,
Bioorg Med Chem , 25(3):1085-1093 (2017).

淵上 剛志, 中山 守雄, 吉田 さくら, 片山 史博, 中家 真里
クロモン誘導体及びアミロイド関連疾患診断用組成物,
PCT/JP2019/008168.

Fuchigami T, Kawasaki M, Koyama R, Nakaie M, Nakagaki T, Sano S, Atarashi R, Yoshida S, Haratake M, Ono M, Nishida N, Nakayama M,
Development of Radioiodinated Benzofuran Derivatives for In Vivo Imaging of Prion Deposits in the Brain.,
ACS Infect Dis., in press (2019).