魚貝類中のセレン含有成分の分析とその栄養機能評価

セレンはヒトの体内に10-15 mg程と極微量しか存在しない元素ですが,種々の酵素の活性中心に存在し重要な機能を担っています。セレンは酸素や硫黄と同じ周期表の16族に属しており,硫黄と類似した性質を示します。生体内では含硫アミノ酸のシステインの硫黄がセレンに置き換わった,21番目のアミノ酸と呼ばれるセレノシステイン(SeCys)としてセレンタンパク質に組み込まれています。環境中には無機および有機の多様なセレン含有物質が存在しており,食品中セレンは生体内で代謝され,SeCysに生合成されます。生体内でのセレン利用効率は摂取するセレンの化学形により大きく異なるため,食品中に含まれるセレンの化学形を明らかにすることで,種々の食品のセレン供給源としての有効性を評価することができると考えられます。日本人は1日におよそ100 µgのセレンを摂取しているとされていますが,その半分以上を魚介類から得ています。しかし,魚介類中セレンの化学形については不明な点も多く残されています。そこで,当研究室では日本で日常的によく食されている魚介類やその加工品に含まれるセレンの化学形を探索するとともに,魚介類由来セレンの有効性を,動物や細胞を用いた実験により調べています。これまでに煮干カタクチイワシ,シジミ,アサリなどの分析を行い複数のセレン含有物質が含まれていることがわかりました。また,培養細胞にこれら魚介類から抽出したセレンを添加すると,細胞内に取り込まれ,セレンタンパク質の一つであるグルタチオンペルオキシダーゼの活性上昇に寄与することが示されました。





<代表論文>

Iwataka M., Yoshida S., Koga K., Fuchigami T., Haratake M., Nakayama M., Separation of selenium species in Japanese littleneck clam ‘Asari’ (Ruditapes philippinarum) and in vitro assessment of their bioavailability. BPB Reports. 1(2), 40-46 (2018)

Yoshida S., Iwataka M., Fuchigami T., Haratake M., Nakayama M., In vitro assessment of bioavailability of selenium from a processed Japanese anchovy, Niboshi. Food Chemistry. 269, 436-441 (2018)

Yoshida S., Koga K., Iwataka M., Fuchigami T., Haratake M., Nakayama M., Characterization of Selenium Species in the Shijimi Clam. Chemical & Pharmaceutical Bulletin. 65, 1045-1050 (2017)