ジェネレータ産生PET核種68Gaを用いた新興・再興感染症イメージング

PETは高い定量性を有する優れた画像診断技術ですが、主に用いられる18Fなどの核種はサイクロトロンなどの大掛かりな施設が必要となります。一方、68Ge/68Gaジェネレータシステムはサイクロトロンを必要せずにPET核種である68Ga標識核種を用時調整することが可能である。そこで、これまでに我々が68Ge吸着剤として開発してきた架橋型デキストランを用いて、小動物実験からヒトへの臨床応用も想定した68Ge/68Gaジェネレータを構築し、68Gaがジェネレータからクエン酸ガリウム(68Ga)として得られるという特徴を活かし、長崎大学熱帯医学研究所の早坂博士並びに長崎大学医学部免疫学分野の由井教授との共同研究にて、新興・再興感染症イメージングへの応用を検討しました。開発した架橋型デキストランのうち、Sephadex G-15を母体としたSeph(15)-MGが、ジェネレータのための68Ge吸着剤として最適な特性を示しました。そこで、Seph(15)-MGより作成したジェネレータにて製造したクエン酸ガリウム(68Ga)を用いた感染症マウスモデルのPETイメージングを行ったところ、それぞれのマウスの炎症部位への68Gaの集積に基づく明瞭なPET画像が得られました。本研究にて開発した新規68Ge/68Gaジェネレータシステムを用いて様々なPETプローブを製造できることから、簡便な臨床PET診断のための新たなツールとして期待されます。現在様々な新興・再興感染症の病態理解のための分子プローブ開発を行っており、今後の展開が期待されます。



<代表論文>

中山守雄,原武 衛,淵上 剛志,岩竹 真弓,
68Ge-68Gaジェネレータ用のGe吸着剤,
PCT/JP2012/077033

Hayasaka D, Nishi K, Fuchigami T, Shiogama K, Onouchi T, Shimada S, Tsutsumi Y, Morita K,
18F-FDG PET imaging for identifying the dynamics of intestinal disease caused by SFTSV infection in a mouse model.
Oncotarget, 7, (1) 140-147 (2016).

Fuchigami T, Ono H, Oyadomari K, Iwatake M, Hayasaka D, Akbari M, Yui K, Nishi K, Kudo T, Yoshida S, Haratake M, Nakayama M
Development of a 68Ge/68Ga Generator System Using Polysaccharide Polymers and Its Application in PET Imaging of Tropical Infectious Diseases.
ACS Omega, 2,(4) 1400-1407 (2017).