がんの早期精密診断を目的とした分子プローブの開発

がん組織の不均一性は、がんの適切な診断や治療効果を妨げる要因となります。我々は、全身におけるがんの精密・個別化診断を可能とする様々ながん関連タンパク質を標的とした分子プローブの開発を行ってきました。Survivinは、がんの生存や増殖に関わる極めてがん選択的なタンパク質の一つです。そこで、がん選択的な画像診断薬への応用を目指し、survivinを標的とした125I標識低分子型分子プローブの開発を行ったところ、種々のがん細胞において良好な膜透過性を示し、survivin蛋白発現部位と類似した集積を示すことが確認されたことから、新たながん診断薬への展開の可能性が示されました。また、survivinに高親和性を示し、強い抗癌活性を有する全く新しいタイプのペプチド分子の開発にも成功しており、がんの診断や治療への応用が期待されます。さらに、がんに高発現している酵素であるLegumainADAM8の酵素活性に応じて切断を受けて細胞内に取り込まれる独自の活性応答型分子プローブ、がんの細胞膜を標的とした分子プローブ、葉酸受容体を標的とした分子プローブなど様々な標的への分子プローブの開発も行っており、今後の展開が期待されます。また、全てのがんの中で最も予後の悪い膵臓癌の早期診断への応用を目指し、自然科学研究機構の宮成悠介博士との共同研究により、高い標的特異性と早い体内動態を兼ね備えたラクダ抗体(ナノボディ)を母体とした分子プローブの開発を行っています。





<代表論文>

Fuchigami T, Mizoguchi T, Ishikawa N, Haratake M, Yoshida S, Magata Y, Nakayama M,
Synthesis and evaluation of a radioiodinated 4,6-diaryl-3-cyano-2-pyridinone derivative as a survivin targeting SPECT probe for tumor imaging.
Bioorg Med Chem Lett, 26, 999-1004 (2016).

淵上 剛志, 中山 守雄, 吉田 さくら, 石川 夏海,
Survivin標的ペプチド,
特願2017-205389.

Ishikawa N, Fuchigami T, Mizoguchi T, Yoshida S, Haratake M, Nakayama M,
Synthesis and characterization of radioiodinated 3-phenethyl-2-indolinone derivatives for SPECT imaging of survivin in tumors.
Bioorg Med Chem , 26, (12) 3111-3116 (2018).

Fuchigami T, Itagaki K, Ishikawa N, Yoshida S, Nakayama M,
Synthesis and evaluation of radioactive/fluorescent peptide probes for imaging of legumain activity.
Bioorg Med Chem Lett, 29(19), 126629 (2019).