松尾 康夫(昭12)
6月6日の定期総会に出席した。久し振りに校歌を斉唱して,一瞬60年昔の学生時代のことが彷彿とよみがえる。数人の方々から,ご挨拶をいただいたが,とりわけ遠藤武男先輩の瓢逸酒脱にして,しかも意気軒昂ともいうべき熱弁を耳にして,深い共鳴とともに大きな感動をおぼえた。さらに歓喜にたえなかったのは,昭13年卒の河野喜美彦氏に50年ぶりに邂逅したことである。しばし欣喜雀躍として懐旧談を交し,旧交を温めることができたのは何よりであった。ともあれ出席して本当によかったと思う。
さて大切な紙面をかりて申訳ないが,駄句を少々披露させていただきたい。
〔1月〕形だけ屠蘇をすすりておめでとう
(ドクターに止められただ今禁酒中なり。)
〔2月〕新義歯は余命考え躊躇する
(歯科医から入れ歯のかわりにインプラントをすれば,天然歯と同じ感じで,30年はもっとすすめられた。しかし保険がきかず,1本につき35万円以上はかかるとのこと。齢すでに81歳,余生いくばくかを考えると心決まらず)
〔3月〕モフ担はしのびまがいにふるもうて
(官僚に密着して情報をつかむことを業とする銀行員のことをモフ担という。)
〔4月〕春日(はるび)遅々夢うつつなり床の中
(近頃気温の変化がはげしいので,うっかりするとかぜをひく。その日は一日中床の中で過ごす)
〔5月〕講釈を言いつつ妻は恵比須顔
(母の日,子供たちからのプレゼントにいろいろ文句を言いながら実は句のとおり)
〔6月〕句づくりの筆がしぶってまとまらず
(昨夜来,雨が降り続いている。うっとおしいことである。句作りも気分がのらず,筆も走らず。書いては消し,消しては書く)
中国の古書に,「今宵酒あれば今宵酔い明日愁い来たれば明日愁う」とある。この詩の真意は,きょうはきょう,明日は明日ということで,これが信仰上の大目標である安心立命の極意だと言われている。私もくよくよせず,一日-日を大切に生きたいものである。
同窓生諸兄のご多幸とご健勝を祈りながら筆を擱く。多謝荒唐の言。