第21回 鎮痛薬・オピオイドペプチドシンポジウム

第1回 アジア・パシフィックオピオイドシンポジウム

長崎大学薬学部分子薬理学研究室 植田弘師

 

 好天に恵まれた2000年8月24日-26日に長崎港入口に位置する伊王島において開催され、日本国内外から171名が参加しました。参加者全員がシンポジウム会場に隣接する施設に宿泊したため、朝から深夜まで会場に缶詰状態でのシンポジウムとなりました。

 

 世話人代表の挨拶に引き続き、花岡一雄先生(東京大院・医)による特別講演「臨床における疼痛管理と今後の展望・オピオイドによる疼痛管理」が行われました。その後、以下の4つのテーマについてシンポジウムが行われました。

 

▼シンポジウム1:オピオイド研究の進歩と展望

 オピオイド関連として、オピオイドの血液-脳関門透過性(岡 哲雄・東海大)、新規オピオイドδ拮抗薬(上野新也・東レ)について報告されました。続いてモルヒネ耐性・依存に関して、臨床の立場から下山直人先生(国立がんセンター中央病院)が問題点を指摘され、改めてモルヒネの有効性を主張されました。基礎研究者の立場からは、耐性・依存形成時の遺伝子発現(郭 哲輝・大阪大)、脳内グリア型グルタミン酸トランスポーターの関与(中川貴之・大)、抗接着因子SPARCの関与(池本光志・工業技術院)について発表があり、モルヒネ耐性・依存形成の分子機構についての最新の研究成果が報告されました。

 

▼ シンポジウム2:ノシセプチン・ノシスタチン研究の最前線

 世界をリードする国内のノシセプチン研究者の方々に、広範な話題を提供していただきました。ノシセプチン・ノシスタチンによる痛覚反応(伊藤誠・関西医大)、ノシセプチン代謝物の薬理学的作用(桜田 司・第一薬大)、ノシセプチン受容体欠損マウスを用いた学習記憶機能解析(山田清文・名古屋大)、新規受容体アンタゴニストJ-113397(尾崎諭司・万有製薬)、脊髄におけるモダリティー特異的なノシセプチンの役割(井上 誠・長崎大)の5題が報告されました。

▼ シンポジウム3:痛み研究最前線

 現在、痛み研究の分野でもっとも注目されている、カプサイシン受容体(富永真琴・筑波大)、ATP受容体(井上和秀・国立医薬品食品衛生研)、疼痛時の可塑的変化(吉村 恵・佐賀医大)についてホットな話題が提供されました。

 

▼ シンポジウム4:ニュ−ロパチックペイン研究の新展開と新しい治療

 まず小川節郎先生(日本大・医)が基調講演「ニューロパチックペイン研究の新展望と新しい治療」により、臨床におけるニューロパチックペインについて概説されました。それに対して基礎研究者の立場からの動物モデルを用いたアプローチとして、坐骨神経結紮モデルラットを用いたニューロパチックペイン発症機構(山本達郎・千葉大)、HSV-1感染による帯状疱疹痛モデルマウス(倉石 泰・富山医薬大)、糖尿病性有痛性神経障害の発症機序(亀井淳三・星薬大)、坐骨神経結紮モデルマウスを用いたPLC/PKCgamma系の関与(矢島義識・星薬大)、同坐骨神経結紮モデルマウスを用いた疼痛過敏応答がRhoキナーゼを介するメカニズムで発生すること(植田弘師・長崎大)が報告されました。また臨床応用例として帯状疱疹後神経痛に対する軟膏塗布治療(目野亜希・東京大)について報告されました。

 

 今回は新しい試みとして、シンポジウム終了後の夜に、発表者と参加者が向き合って自由討論を行う時間を設けました。懇親会後のほろ酔い気分も手伝って、和やかな雰囲気の中、各テーマの内容がさらに深く堀り進められ、今後の展望が示された有意義な時間となりました。

 また、シンポジウム会場横のフロアでは会期中常時23題のポスターが掲示されました。海外からも数名の発表者を受け入れ、オピオイドやニューロパチックペイン研究について熱心な討議がなされました。

 

 26日には朝からアジア・パシフィックの7名と国内からの講演者3名の招待講演者による第1回 アジア・パシフィックオピオイドシンポジウムが開催されました。循環器、ヒト脳組織?を用いた研究、分子生物学的研究、最新の情報伝達機構に関するものなど、いずれも高いレベルで、しかも幅広い領域の研究報告であることを改めて感じ、国際会議(INRC)ではそれぞれの興味で忙しく研究交流が十分できていないことを考えると、今後ともこのような支部会活動が必要であることを実感しました。

 

なお、講演要旨の残部がありますので、ご希望の方は長崎大学薬学部分子薬理学研究室 水野までご連絡下さい。