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HPLC-蛍光検出による大気粉じん中の多環芳香族炭化水素の九州内特定観測地点におけるレトロスペクティブ分析

伊原亜由子1),岸川直哉1),和田光弘1),黒田直敬1),世良暢之2),中島憲一郎3)
(長崎大・薬1),福岡県保健環境研究所2),長崎大院・薬3)

【目的】近年,呼吸器系疾患(肺がん,喘息,アレルギー性鼻炎など)は増加傾向を示し,大気中の浮遊粉じんはその一因と考えられている。多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbons,PAHs)はこの大気粉じんに付着しており,発がん性や変異原性を有するものが多い。さらに,それらの中には内分泌撹乱作用が疑われてきている化合物もあり一層の関心が持たれている。我々はこれまでにHPLC蛍光定量法を用い,長崎市街地のPAHsによる汚染状況調査を行ってきた1)。今回この測定法の改良法として,内標準物質(I.S.)1,2-bisanthrylethaneを用いる定量法を確立し,九州内における特定観測地点のPAHs濃度の変化を測定し,その他の大気汚染指標物質との関連性を調べた。

【実験】大気粉じん試料として,ハイボリウムエアーサンプラーを用い特定観測地点において,1976年〜1998年に石英繊維フィルター上に捕集したものを用いた。このフィルターから一部(2×2.5 cm)を切り取り,細断後,I.S.のCH3CN溶液を50μl添加する。ヘキサン40 mlで2回超音波抽出し,これを合わせてろ過後,5%NaOH,20%H2SO4,及びH2Oで洗浄する。得られたヘキサン層を減圧乾固し,残渣をCH3CN 200μlに溶解する。メンブランフィルター(0.45μm)でろ過後,その20μlをHPLCに注入する。検出には,各成分をできるだけ最適波長近辺で検出できるようにタイムプログラムした蛍光検出器を用いた。

【結果及び考察】1976年〜1998年に捕集した大気粉じん中の13種類のPAHsを測定した。PAHsの合計濃度(mean±S.D.,n=36)は,15.54±21.24 ng/m3であった。大気中PAHs濃度の年次変動を調べたところ,1978〜1981年に最大となり,以後急激に減少した。各PAHsの平均濃度は多い順にphenanthrene 4.06 ng/m3,benzo[g,h,i]peryrene2.82 ng/m3,indeno[1,2,3-cd]pyrene 2.53 ng/m3であり,その他の化合物では1.31 ng/m3以下であった。またPAHs濃度といくつかの大気汚染物質の間に非常に高い相関が得られた(非メタン系炭化水素,r=0.962;大気中浮遊粉じん,r=0.925;一酸化炭素,r=0.892;n=36)。これらの化合物の発生源として自動車が知られており,この観測地点においてもPAHsの発生に自動車が強く関係していることが示唆された。1)M.Wada et al.,Environmental Pollution in press (2001)