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アメリカ・LA 滞在記

藤澤晶子(昭和59年卒)

渡米前に

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 主人の留学に伴い、子供4人連れてアメリカのロサンゼルスで2000年11月から2002年7月まで暮らしていました。留学なのでお給料も家賃分くらいしか出ず、この年で貯金をほとんどはたいてしまうことに。おまけに4人目の出産とかさなり、行くの行かないの、生むの生まないのと出だしから大もめになりましたが、結局、主人は5月末に一人で旅立ち、私と子供達は4人目が生まれてから11月末に行くことになりました。違う所、驚く所など山のようにありますが、今、私自身が最も興味のある学校教育を中心に書かせてもらいます。
 二人共海外旅行の経験はほほとんどなく、ハワイもなし。おまけに私は英語はからきしだめ。 英語が大の苦手だったからこそ、二次試験で英語のない長崎大学を選んだのになぜアメリカに?・・・行く前はみんなにアメリカはレイプ、誘拐、銃とさんざん脅かされ、英語もできないのに、私1人で子供4人を無事に守りきれるだろうかと身も心も本当に縮む思いでした。

LAはいいところ

 しかし案ずるより産むが易しで、人種差別らしきこともあるし、意地悪されたこともあったし、英語は早くて最後までチンプンカンプンだったけど、全般的にはとてもいい所でした。

America is a good place to live.

と言う歌がありますが、本当にその通りです。沢山、移民が来るのもわかります。日本に比べると物価も安いし、量も多い!どんな所でも車で乗り付けることができるし、駐車場を気にすることもない。うちのような大家族にとっては本当に生活しやすい所でした。4番目がbabyの時に過ごせて良かったと思っています。
 それにLAは気候がいい!これだけでも暑くて寒い日本と比べると住む価値があります。6,7月は日中はすごく暑いですが、朝晩はぐっと冷え熱帯夜とは無縁。8月にはもう涼しい風が吹きます。冬でも日中は基本的には半袖。やはり朝晩はかなり冷えるのでDISNEY LANDで最後の花火まで見るときはski wearのような防寒服が必要です。この暖かい気候のお陰で私達は滞在中1度も病院のお世話になりませんでした。食べ物もカビないし、虫もゴキブリもいない(アリはすごいけど)。雨季は1年のうちわずか1ヶ月ほど。それでも降ったり降らなかったり。それ以外は全く雨はふりません。そのくせ、水は豊富にあるんですよね。老後はLAでと思っている大きなポイントです。
 アメリカに関してほとんど予備知識なく、あるのは少し先に行った主人の主観的言葉だけ。LAといえば悪の巣窟、高い高層ビルが印象としてあるのですが、主人の言葉は「LAは田舎だから平屋しかない」とのこと。混乱する私でしたが、行ってびっくり、高層ビルがあるのはdowntownの一部だけ。広大なLAは上に立てる必要がないので平屋かせいぜい2階建て。

Culture Shock

 こんなに情報網も発達してるし、日本はすぐアメリカのまねをするから、さぞ同じ部分が沢山あるだろうと思っていたら、もう、1から10まで全く違っていて本当にculture shockでした。ポストは青くてゴミ箱みたいだし、アメリカの鉛筆は先に消しゴムがついてるので日本の筆箱には長くてはいらないし、紙の大きさのA4、B4っていうのは世界共通だと思っていたのに違うし、ノートも昔日本にもあった、かねのぐるぐるがついたやつです。ぶどうでも、ももでも果物は皮ごと食べるし、ブロッコリーやカリフラワーは生で食べてる。
 学校のシステムももちろん全く違います。まず、市のDistrictに行って受付をしますが、予防接種の条件がそろわないと学校に通うことができません。それを早くすませるために子供達は1回に3本も注射を打たねばなりませんでした。熱が出るのは当たり前。ツベルクリンの判定も日本と異なるため、もう1度やりなおしだし、B型肝炎の予防接種もありました。

子供の学校について

 学校に通うほとんどの生徒は親または保護者が送り迎えしています。アメリカは送り迎えしないといけないから大変よと言われていましたが、車で5分だったのでとても楽でした。Kinderは子供の所まで行かなければ渡してくれません。学校に毎日行くので、日本にいた時より子供達の様子がわかってよかったです。LAは小さな市が沢山集まっているところですが、私達の住んでいた所はArcadiaという学校区の環境の良い所でした。住宅街は静かで緑にあふれ、木にはリスが沢山いました。近くに植物園がありそこで飼っている孔雀達がいつも通りを歩いていました。孔雀をひいたら罰金だとか。日本ではよくネコがひかれていますが、アメリカではリスやスカンクがひかれます。スカンクは相当くさいらしく、ひいた車はもうおシャカだそうです。
 学校に持って行くのは低学年のうちはlunchだけ。本も鉛筆も消しゴムものりも学校に用意してあります。だから用意は簡単。でも高学年になると大変らしく教科書も事典みたいに相当重くなるので、旅行用(アメリカでは学校用?)のガラガラひく子供用のスーツケースも持って来ています。 学校教育はとても良かったです。アメリカに来ている日本人の多くは教育がいいのでこのまま留まりたいと思うようです。うちの長男も2年生で行って4年で帰国しましたが、アメリカだったら受験もないし、もっと余裕を持って生活できたのにと残念です。

学校の時間は8:30〜2:30です。

 high schoolでも3時に終ります。送り迎えする親のためにelementary、middle、high schoolと少しずつ時間がずらしてあります。車で送り迎えなので2:45には家に着いていました。学校が早く終るため、習い事もいろいろできるし、家に帰ってからも余裕があります。1クラスも低学年では20人だし、高学年でも30人なので先生の目がよくいきとどきます。日本も就職難で教師になりたくてもなれない人が沢山いるのだから、そういう人をどんどん採用して1クラスあたりの人数を減らすべきだと思います。
 アメリカは高校まで義務教育なので1円もいりません。高校は市に1つだけで、いい高校に行こうと思えば、そこに住んでいるだけで必然的に行けるのです。でもそういう学校区のレベルの高い所は家賃も高く、所得の低い人たちは住むことができません。アメリカの人はよく家を住み替えるようで、買った家を高く売るためにも教育に熱心になります。学校区のいい所は家の庭もいつも手入れされていてきれいで、通りにもゴミ一つ落ちていません。市の条例などで芝の長さまで決まっているとか。街の環境も良く、犯罪とも無縁になるのです。
 私達が住んでいた家のすぐ近くの銀行でも白昼、policeがパトカーを音もさせずに逆走させて来て入り口の前でいきなりライフルを出して構えているシーンに出くわしたこともありましたが、それでもここは安全な所でした。 公立の学校では5歳になるとkinderに入れます。これは午前か午後かのどちらかですが、中身は学校と同じで1stになって困らないように勉強を教えてくれます。びっくりしたのが、アメリカは異人種の寄せ集めだからでしょうか、このkinderからアメリカの歴史を学びます。2月のPresidents' dayの頃はワシントンやリンカーンの事を学びます。King牧師の話やThanksgivingの頃にはMayflower号で来た始めてのPilgrimsとIndiansとの関わりを学びます。そして毎朝、星条旗に向かって胸に手をあてて誓いの言葉を言います。これがelemenntaryの間ずっと続くのです。
 英語の嫌いな長男もこの文だけは忘れたくても忘れられないといいます。移民の子達にあなた達はアメリカ人だよと叩きこんでいるのです。これが国家を強くする秘訣なのだなと思いました。日本で学校教育を受けた事のなかった長女はもう自分はアメリカ人なのだと思っていました。

子供の学校について パートII

 1stになると少しずつsocial scienceというのが入ってきます。日本では身近な「住んでる町を知ろう」なんてのがありますが、ここではいろんな国から来てるので身近な事が違いすぎるからか、大きなことからはじまります。みんなに共通していること。子供が感心があることから。例えば、クジラ、哺乳類、爬虫類、恐竜、石、気象、世界地理、Californiaの地理など。日本の教科書をみてもちっともおもしろそうじゃないけど、これは興味をひく事柄です。
 算数は日本の方が上だと思っている方が多いかもしれませんが、そうではありません。初めは簡単ですがだんだん難しくなってきてすぐに日本を追い抜くそうです。elemenntaryの高学年からできる子は特別なカリキュラムになるそうです。middleではもう日本の大学と同じで、自分の取る授業の先生のクラスに受けにいくそうです。だから、できる子はどんどん上のクラスを取ることができます。日本のような画一的なやり方では伸びる子の目を摘んでしまいますね。
 宿題も沢山でます。特に力を入れているのはreadingです。毎日15〜20分はreadingをしなければならず、親のサインをして金曜に学校に提出をします。日本の学校はほんと、宿題が少なくて不安なのですが、アメリカは高学年になると毎日reading、mathの宿題が2〜4まいずつ出るそうです。学校の宿題だけでもかなりの量になります。elementaryでは特に部活というのはありませんが、音楽には熱心で4thになると希望者にはviolinやclarinetを貸してくれます。high schoolでもBANDというのが盛んに行われていて、大学進学にも影響するようです。
 日本ではあれもできて、これもできないとみたいなところがありますが、アメリカでは進学にあたって一つの事を長く続けるということが評価されるのだそうです。一つのことに秀でなくてもいい、一つのことをずっと続けるということが大事だそうです。だから自分の好きなこと、水泳でもpianoでもtennisでも続ければいいのです。 自分の好きなことを頑張れば評価される。大学まで受験がない。もちろんprivate の学校はありますが、そこはお金を積めば入れるのです。だから、アメリカ人は大学に入ってから頑張れるんだなと思いました。自分の好きなことなら頑張りますよね。好きな事だからOlympic gamesでもpressureに打ち勝って金メダルをあんなに沢山とれるんだなと思いました。 日本は小さい時にストレスが多すぎます。受験もどんどん低年齢化してるし、大学に入ったときにはヘトヘトでもう余生になってますね。特に今の日本の教育はほんとあてにならないと思います。それにムダも多い。
 それから子供同士のけんかなども厳しく注意します。子供だからという考えはないようです。だから子供も先生に言ったもん勝ちです。子供の時から言い訳上手です。暴力的な事は特に嫌います。鉛筆でチャンバラごっこや、カラテのまねなども厳しく注意されます。  また子供達の行っていた学校ではrespect、trustworthiness、fairness、responsibility、citizenship、caringということを強く教えていました。これらのことを友達にした子には先生がyellow slipという黄色い紙をくれます。その紙が貯まると先生からprizeがもらえ、学年の最後には賞状ももらえます。特に道徳の時間はありませんが、子供達はいつもこれらの行いを意識しています。yellow slip欲しさですが。
 反対に悪いことをした子はblue slipというのをもらいます。ただの紙切れですがこれをもらった子は泣くほど辛いことのようです。授業中、先生の言う事をきかなかった子などの罰として頭を机につけるというのがあります。また休み時間友達が外で遊んでいる間、自分は外にイスを出してそこで5分間だけとか、じっとして見ていなければならないというのもあります。日本のようにぐちぐち怒るとかではなく、短くずばり注意して罰を与えるという感じのようです。
 楽しみも多いです。Valentine、Halloween、Christmas、学期末のPartyなど。クラスでも先生によってはよくお菓子をくれます。クラスメイトのBDの時は日本では回りがプレゼントをあげますが、アメリカでは本人が回りに祝福のおすそ分けとしてcupcakeやおもちゃなどを配ります。  夏休みも3ヶ月近くもあり、いろんなcampがあります。ふだんできないことをこの間に体験します。勉強、science、sports(swimming、fencing、golfなど)、普通はday campですが高学年になるとお金を出せば1ヶ月くらいNational Parkで野外campをしたり、海外に連れて行ってくれるのもあります。
 学校のことが中心になりましたが、全体的にみて日本は無駄が多すぎます。無駄な集まり、無駄な会議。もっとslimすべきです。

最後に

 私が住んでいた短い間で、しかも狭いエリア内での感想ですが、学校に限らず日本の常識が世界の常識ではないということ。私達は小さな国日本のごく小さな地域でしか生活しておらず、場所が変われば常識もこだわっていることも全く違うということ。狭い日本の中でこうでなければいけないとかたくなに思っていたことも世界に出るとなんの意味もなかったりするので驚いたり、ほっとしたり。あんなに厳しく注意したり、叱ったりすることなかったなって。
 Californiaは色んな人種がいますが、特にアジア人(中国、台湾、韓国、ヴェトナム)は多く、その中でもChineseの勢力には驚かされるものがあります。よく働き、勉強し、金も持っている。このままではアメリカが中国にのっとられるのは時間の問題という感じですが。その中においても一つだけ日本人が優れていることがあります。(電気製品、車、ゲーム機、アニメーションは日本市場でしたが)それは勤勉さです。仕事の迅速さ、正確さ、丁寧さ、まじめさだけはどこの国にも負けないと確信しました。これだけは世界に誇れ、また失いたくないものです。

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